大国の首脳級が会談して「相互利益の拡大で一致」などといえば、前進がなかったと考えるのが外交の読み筋である。さきのオバマ米大統領と中国の習近平国家副主席の会談のことを指している。
中国に好意的な新聞は、「共存シフト」「思惑が一致」と書いた。だが、米ABCテレビは習氏の振る舞いを「まるでロボットのよう」との辛口論評を紹介していた。オバマ批判を続ける共和党大統領候補のロムニー氏になると、「実のない虚飾と儀礼に終わった」と手厳しい。むやみに対立は望まないから、「相互利益」でお茶を濁すのは最低限の外交辞令である。オバマ氏は秋の大統領選を控え、習氏も同時期の総書記就任を前にしているから、互いの譲歩や妥協はあり得ない。
実のある米中合意は、中国からカリフォルニア州への投資、アイオワ州からの穀物輸入の合意ぐらいなものだ。ワシントンでの政治的な齟齬(そご)を、中西部の経済的な契約で繕ういつもの中国首脳級外交である。
ありていにいえば、中国が繰り出す外交スローガンを、心ある国家と国民は信じなくなったということだ。軍備増強をしながら「平和的な台頭」をいい、その軍事力で脅しながら「ウインウイン(相互互恵)の関係」などといって誰が信じよう。
米政界だけみても、対中融和路線だったオバマ氏の民主党は地方選のたびに敗北している。理由は米国民が感じる「メード・イン・チャイナに雇用が奪われている」との危機感だ。
米西海岸に住む友人は、「19世紀にカリフォルニアで起きた中国人排斥のような雰囲気がある」と語っていた。共和党の大統領候補だったハンツマン前中国大使が、国際経験の豊かさを強調するために少しばかり中国語を口にすると、ブーイングの嵐に見舞われた。おかげで選挙戦から撤退せざるを得なかった。
“中国忌避症”は米国だけの現象ではない。米外交評議会のリズ・エコノミー上席研究員によると、中国が時代遅れの原則と実際の行動の落差からますます信頼を失い、孤立への道をたどっているという。
小欄でも紹介したミャンマーは、中国の手になる巨大ダムの建設を中止している。ダムの規模は、シンガポールの全面積にものぼる土地が水没するほどで、中国人の手により中国に電力を供給することを目的としていたからだ。
中国が投資を拡大しているアフリカや中南米でも、「ウインウインの関係」とは中国のためだけの「ウイン」であることが露見してしまった。
すでに、ザンビアの新大統領は「わが国が中国の一省になってしまった」と悲鳴を上げた。ペルーの首相は「ペルーの労働法や環境を尊重してもらいたい」と、中国式の開発モデルを拒否する。ブラジルやアルゼンチンでも、国土を中国人から守るため、新法を制定して買収を阻止しようとしているという。
狙いは石油など鉱物資源の採掘に関わるものが多く、人さまの資源をいただく割には頭が高い。中国の傍若無人ぶりは、南シナ海や東シナ海で見せつけられているから、さもありなんか。日本の水源林が外国資本に狙われながら、これを見逃す日本政府は、いったい何をやっているのか。(東京特派員)
【湯浅博の世界読解】広がる中国モデルの忌避症 2012.2.22 07:54 (via nandato)